磯や漁港での釣りでは飽き足らず、自ら沖に攻め込んで釣りをするゴムボート釣行。
海は果てしなく広いため「一体どこまで行けるんだろう?」という冒険心が湧いた方も多いのではないでしょうか?
大前提として、2馬力のゴムボートは免許不要・船検もなく法律に縛られていない為、ルール上はどこまででも遠くに行くことが可能です。
しかしそれは自殺行為であり、実際には船外機の残燃料と速度、天候の変化、トラブルが発生しても帰還できるかどうかを総合的に判断しなければならないのがゴムボート釣行の恐い面でもあります。
ゴムボートメーカー大手JOYCRAFTは、各種ボートに推奨する航行区域を設定しており、そのほとんどが”3海里(5.5km)”もしくは”安全に帰還できる距離”と明記されています。
今回は「安全に帰れる事」と「3海里(5.5km)」を基準に、ゴムボートはどこまで行けるのか?という話をしていきたいと思います。
おすすめの2馬力ゴムボートは以下の記事を参考にしていただければと思います。
2馬力ボートは危ない?どこまで行けるかを知る上で重要なこと
まず、どこまで行けるのかを考えるときに欠かせないのは船外機の性能です。
まずここでは釣りに使用する2馬力エンジンの性能についてみておきましょう。
燃料満タンでの連続走行距離は?
船外機はレギュラーガソリンで動いており、燃料タンクは原付バイクに比べてもかなり小型です。
船外機メーカー主要4社(HONDA、TOHATSU、SUZUKI、YAMAHA)の現行モデルを比較してもほぼ違いはなく、平均1Lのタンクが標準でした。
各社の2馬力エンジンの燃料消費を比較したデータがあるのですが、ガソリン500mlで平均30分、つまり満タンの1Lなら約1時間が限界ということになり、それ以上の走行を求める場合は携行缶に燃料を入れて積み込む必要があります。
2馬力エンジンの巡航速度
2馬力エンジン×3mゴムボートの平均速度は一般的に8~10km/hと言われています。
波の影響や荷物の重量によってさらに速度は落ちる為、10km/h未満、人間のジョギング程度の速度しかでません。
10km/hで走行し続けられたとすると、5.5kmの距離を走るには片道33分、8km/hなら42分、6km/hなら55分かかる計算になります。
スマートフォンの電波圏内かどうか
海上で命の危険に晒された場合、海上保安庁に救助要請をする必要がありますが電波がなければ救助要請すらできずそのまま海難事故に直結します。
auは電波圏のエリアマップを公開しています。
地図の水色の部分を見ると、海上にも電波が届いていることが分かります。
距離でいうと陸地から7~10km沖までは圏内なので、燃料すら切れるほど遠くに行かなければ電波の心配はないと言っていいかもしれませんが、電波は海上では命綱のようなもの。こまめに電波と充電は確認しておきましょう。
ここまでをまとめると燃料と走行性能を考えた場合、連続して走行できるのは携行缶抜きにして1時間前後、安全面を考慮すると陸から10km未満が2馬力ゴムボートの限界距離だと分かります。
しかし実際の釣行ではずっと走り続けているわけではなく、ポイントに到着すればエンジンを切って釣りを楽しみまた少し移動を繰り返して帰還、という流れなので2馬力エンジンは近海で十分活躍してくれる性能だと思います。
2馬力ボートの出航は天気に左右される
どこまで行けるのか以前の問題として”そもそも出航できないパターン”がゴムボートにとっては日常茶飯事です。
せっかく準備して海岸まで来たけど今日は止めよう・・・という事は残念ながらよくあります。
では何を基準に決めれば安全なのか?結論からいうと、風速5m/s以下、波高0.5m以下が絶対守るべき基準になります。
風速
風速5m/sは陸上では全く強く感じません。
いつも「今日は釣りに出れる!」と期待してしまいますが、海上ではそうはいかないのです。
5m/sを越えると海では白波が立ち始め、うねりも激しくなります。
ゴムボートは海面に近く小型なためこの影響をもろに受けることになり、船内には白波が侵入し、波の抵抗で速度が普段の半分ぐらいまで低下します。
こうなってしまうと恐怖と走行性能の低下でまともな釣行にはなりません。
波高
一般的な天気予報での波高は「有義波高」という、簡単に言うと1000個の波を計測した平均値のようなデータを表記することになっています。
そしてそれは統計学的に見ると、最大でその表示よりも2倍の高さの波が含まれていると言われています。
つまり、天気予報で0.5mの波高の場合、1000回に1回は2倍の高さの1mの波がゴムボートを襲ってくる可能性があるわけです。
釣り用スマホアプリで天候変化をチェック
「午前中は無風で凪、午後からは風が強くなり雨が降る」みたいなパターンは要注意です。
こういう見切り・見極めは結構難しく、ついつい欲が出て釣りを続けてしまうものです。
スマホアプリのタイドグラフや海釣図Vで事前に確認し、釣行中も気温や雲の変化を感じたら情報を確認し、時には引き上げる判断をしましょう。
潮見表アプリ「タイドグラフBI」/ 業界初!3,000カ所の釣り場対応 (chowari.jp)
海釣図V(かいちょうずV) – 海釣り用GPSマップ (mapple-on.jp)
ゴムボートでどこまで行けるかを考えるときに、上記のような天候変化も考慮しないと帰れなくなってしまいます。
無理をせずいつでも安心して戻れる距離を確保し、遠くのポイントに行く場合は数時間後の天候変化をチェックしてから移動したほうが懸命です。
2馬力ボートのトラブル時にオール手漕ぎで帰れる距離は?
ゴムボート釣行のトラブルで最も不安になるのはエンジンが掛からなくなる事です。
2馬力エンジンの船外機はシンプルな構造ですが、海水を相手に走行しているため管理が繊細で、メンテナンスを怠るとたちまちトラブルに見舞われます。
そこで最後の手段としてゴムボートに搭載しているオールを手で漕いで戻る事になるのですが、こればかりは「速くて良いオール」なんてものはなく、操舵者の気力と体力に大きく左右されるため、人によって異なります。
余裕があるときに海上で自身でオール漕ぎしてみて体感しておくと、万が一の時もパニックにならず帰還することができるでしょう。
万が一帰れなくなった場合の対処法と必須装備品・NG装備品
万が一の時は海上保安庁への連絡
もし命の危険を感じる状況に直面した場合、まずは迷わず救助要請しましょう。
海上保安庁 緊急通報番号は「118」です。
いつ・どこで・何があったかを落ち着いて連絡しましょう。
必須装備
2馬力ボートでの安全な釣行のためには以下のようなものは必ず持っていくようにしましょう。
- スマホ
- 防水スマホケース
- モバイルバッテリー
- ガソリン携行缶
- ライフジャケット
海に投げ出されたときにスマートフォンを持っていない、防水されていないでは意味がありません。
防水スマホケース上から操作でき、体から離れないよう繋いでおけるものが必要です。
以下のように防水、ケース上から操作可能、魚の撮影もでき、水上で浮くタイプがおすすめです。
繰り返しになりますが、スマホは万が一の時の生命線です。
景色や魚を撮ったりアプリを使用しているうちに充電がなくなってしまうことも。それに備えてモバイルバッテリーは携帯しておくと安心です。
以下のような防水タイプのモバイルバッテリーがおすすめです。
沖に出ているときにいつの間にか燃料切れになった場合、オールで数キロ漕ぐのは途方もない時間と労力がかかります。
風向きや波の高さによってはそのまま帰還できなくなるリスクもありますので、かならず予備の携行缶を持っていきましょう。
2018年2月からライフジャケット着用が義務化されましたが、法規制のないゴムボートはこの対象ではなく法律上は付けなくてもよい事になっています。が、絶対に着用すべきです。
自動膨張式のコンパクトなものがオススメです。
ウェーダーや胴付き長靴はNG
陸からボートを出す際にどうしても海に足が浸かる為、寒い時期は胴付きを使いたくなりますが、万が一海に投げ出された場合内部に海水が溜まり浮上できなくなる可能性があります。
ゴムボートでの釣行時は少し我慢して膝まであるロングタイプの長靴を使用したほうが安全です。
まとめ
2馬力エンジンのゴムボートはどこまで行けるのか?というテーマでお話しましたが、結論をまとめると以下になります。
- 燃料タンク容量的に連続走行時間はMAX約1時間
- 距離は10km以内
- オール手漕ぎで帰還できる距離であること(個人差あり)
- 安全が最優先
遠くのポイントを攻めたい時もありますが、天候と燃料を意識して安全最優先で釣りを楽しみましょう!
コメント